歯は、あごの骨の中の歯胚とよばれる歯のもとからつくられます。乳歯の歯胚は妊娠7週目頃からできはじめ、永久歯の歯胚は出生する頃からできはじめます。そして、乳歯は生後6カ月から生えはじめ、3歳頃までに上下各10本ずつの20本が生えそろいます。
永久歯は第1大臼歯と前歯が6歳頃から生えはじめ、12歳頃までに永久歯上下28本が生えそろいます。
そのあと早い人で14歳頃から、遅い人は20歳を過ぎてから「親知らず」は生えてきます。
他の永久歯と比べ、生えてくるのがとても遅く、多くの場合は親元を離れてから生え始め、親の知らないうちに生えるというので「親知らず」と呼ばれています。
「親知らず」とは、歯列の一番奥の第3大臼歯のことを言います。知恵がついてから生えるというので「知恵歯(ちえば)」「知歯(ちし)」とも呼ばれています。
「親知らず」は、傾いて生えたり、横向きに生えたり、歯の一部だけしか出てこないなど正常に生えてこなかったり、歯はあってもあごの骨の中に埋まったままで、歯が生えてこなかったりします。
その原因はいくつかあると言われていますが、一番の原因は、現代人の食生活にあると考えられます。昔の食生活は硬いものが中心でアゴの骨が発達し「親知らず」が生えるスペースが十分にありました。
ところが、現代人の食事は十分に調理された柔らかい食品が多く、結果としてアゴの骨が十分に発達せず、顎が小さくなってきています。そのため、永久歯がすべて生え揃うだけのスペースがなく「親知らず」は正しい位置にきちんと生えないことが多いのです。
「親知らず」を放っておくと、「下顎智歯周囲炎」という病気になりやすくなります。
一般的に全ての歯は”ゴードンの法則”といって、支えがなければ口の先端方向に傾いたり、移動しようとします。歯列の最後に位置する「親知らず」が、正常に生えるペースがない場合、常にすぐ前の第2大臼歯を圧迫しつづけることになります。
これにより、歯列全体が押されるため、歯ならびを悪くする原因の一つとなります。
正常に親知らずが生えてきていない場合、正しいブラッシングができないため、むし歯や周囲炎をおこしやすくなったりします。
第2大臼歯の親知らず側の歯根は、埋もれた親知らずによって絶えず圧迫され、溶けて親知らずに吸収されることがありますので、その時は第2大臼歯も抜歯しなければならなくなることもあります。
口の中が不衛生になるため、ばい菌の温床となり、口臭の原因になります。
親知らずが半分だけ頭を出した状態では、親知らずとその前方にある歯との間に食べカスなどがたまりやすく、食べたものを押し込む結果となり、歯を磨いただけではなかなか取れません。こういう状態では、食べカスが口中の細菌によって腐敗し、周囲の組織に炎症をおこします。その炎症が「下顎智歯周囲炎」です。
下顎の親知らずの周りの組織は炎症が広がりやすく、感染を放置しておくと周囲に広がっていきます。
頬が腫れたり、顔全体が腫れ上がるなどの症状や痛みがおき、ひどくなると、のどにまで炎症が広がり、食べ物が飲み込みにくくなります。炎症が広がると、口が開かなくなったり、さらに炎症が進むと、発熱や悪寒などの症状があらわれます。